おしりとおなかのクリニック ふるかわ北安東クリニック

肛門疾患にはどんなものがあるの?

 肛門疾患には、1.痔核(イボ痔)2.裂肛(切れ痔)3.痔瘻(あな痔)と肛門周囲膿瘍4.直腸脱 に大きく分けることが出来ます。また【1.痔核(イボ痔)】には、内痔核と外痔核があります。


1.痔核 - 内痔核

症 状

 痛みのない出血と痔核の腫れや脱出が主な症状です。初期の段階では違和感、異物感や閉塞感などのこともあります。
内痔核は脱出の程度から4段階に分類されます。

I度:排便時に出血がみられますが、痔核の塊は肛門の外に脱出することはないもの。
II度:排便時に痔核が脱出しても、排便が終わると自然と中に戻るもの。
III度:排便時に痔核が脱出し、戻らず、指で押し込まないと、戻らないもの。
IV度:痔核が肛門外に脱出したままのもの。俗に脱肛といいます。

診 断

痔核は、肛門内の皮膚と直腸粘膜の接合部付近にある静脈叢(静脈の塊)が発達し、うっ血して大きく膨れ脱出する病態です。狭い意味では前者を痔核と呼びますが、両方を広い意味で痔核として扱います。
痔核は決して自然には消失しません。消長を繰り返しつつ、徐々に悪化していきます。痔核の原因はまだ、はっきりとはわかっていません。かつては、いきみなどで静脈叢(痔核組織)が繰り返しうっ血して増大し、脱出するようになると考えられていましたが、最近は、支持組織の緩みが起きるのが始まりで、それにより静脈還流が悪化して、痔核が増大すると言われるようになってきました。

治 療

 I~II度は軟膏や坐薬などで治療します.しかしIII度以上やI度でも出血が多い場合や痛みが強い場合は,手術治療が最善の方法です.その他,軽度の症例では、当院では、外来にて硬化療法やゴム輪結紮法を行なっております。4~5分間で処置は終了し、痛みはほとんどありません。

手術治療

 当院では、現在主流の結紮切除術を行なっております。痔核のあるところだけを切除します。肛門の縁より2cmほど離して皮膚を切開し、肛門括約筋から静脈叢を剥がしとります。奥は痔核組織の上縁まで十分に切除します。太い痔動脈が痔核組織に向かってきていますので、それを縛り、痔核組織を切りとります。常に便で汚染される場所なので、肛門の外の傷(ドレナージ創)を十分にとるなど、化膿させない工夫がなされています。
 術後の痛みが強く手術を敬遠される方が多いようですが、当院では2種類の麻酔(脊椎麻酔と硬膜外麻酔)を行なうことにより、痛みを緩和させることに成功しております。
 また、他の疾患と比べて、術後に出血することが比較的多い手術でしたが、当院では、最新式の超音波メスを導入したことにより、確実に止血コントロールが行なえ、痛みも殆ど感じません。手術日の夕方から,普通食をとることが可能です。内痔核は通常3箇所の手術を行いますが、1箇所の場合や、軽度の場合は、日帰り手術も充分に可能と思われます。入院期間は、基本的には1~2日ほどですが、手術の程度で前後します。

1.痔核 - 外痔核

症 状

 肛門の縁に突然痛みを伴ったやや青紫色のしこりができます。普通1つだけの事が多く、エンドウマメほどの大きさの事が多いようです。これは血の塊(血栓)ができた状態です。多くの場合、きっかけとなるエピソード(いつも以上に下痢が続いた・便秘をして苦労した・アルコールを飲みすぎた・長く座っていた・運動したなど)があります。肛門の外の腫れだけが認められる場合と内痔核の腫脹も伴った場合があります。

治 療

 外痔核は、薬でよくなることが多いのですが、痛みが強かったり腫れが退かない場合は血栓を取り除く手術(血栓除去)を行います。当院では局所麻酔下に外来で行なっています。肛門の痛みは著明に改善されます。しかし、外痔核は、内痔核をもった人ほどできやすいといわれており、内痔核の腫れが伴う症例で、血栓除去を行うと出血が止まらなくなることがあります。専門医の適切な判断が必要です。

1.痔核 - 特殊な痔核 嵌頓(カントン)痔核

症 状

 内痔核が大きく腫大脱出し、肛門を締める筋肉(肛門括約筋)で絞められることにより発生します。循環障害により痔核表面が腐りかけ、周囲にかなり強いむくみを伴います。痛みは強く、痔核を肛門内に戻すことは困難です。

治 療

 当院では、軟膏と腫れ止めの内服薬で数日様子をみます。更に、肛門にアイスキャンディーのようなもの(アイスキャンディーそのものではありません!)で肛門の腫れを冷やします。多くの症例では痛み、腫れとも軽快します。
手術を行なわなくて済む場合もありますが、普段から脱出を繰り返している方には手術をお勧めしております。

2.裂肛(切れ痔) - 急性裂肛

症 状

 肛門の上皮が浅く裂けている状態で、発症から日が経っていない状態をいいます。かゆみを感じることもありますが、多くは排便時の痛みと出血がみられます。出血は軽度で、トイレットペーパーにつく程度です。

治 療

 軟膏や坐薬で、多くの方は軽快します。しかし、何ヶ所も切れていたり、肛門の緊張が高い場合には、麻酔下に肛門括約筋を伸ばし肛門を広げること(ブジー)で、痛みを和らげます。さらに治療が必要な場合は、局所麻酔下(歯医者さんの抜歯に使う麻酔と同じ)に肛門括約筋を切開する方法があります。比較的テクニックが必要な手技ですので、専門医による治療が必要です。多くの場合は日帰り手術が可能です。

2.裂肛(切れ痔) - 慢性裂肛

症 状

 いつも同じ場所(肛門の後方が好発部位)が切れ、深くなり、その周囲に肛門ポリープや‘みはりど‘などが出現した状態を慢性裂肛と呼びます。裂け目がさらに深くなり(肛門潰瘍)、周囲に炎症がおきると括約筋に線維化がおき硬化して肛門が細くなります(肛門狭窄)。化膿することもあり(化膿性肛門潰瘍)、そこから痔瘻を形成することもあります(裂肛痔瘻)。

治 療

 薬の治療ではよくならないので、肛門を広げる手術をします。まず、治ってない裂肛と線維化がおきて硬くなった部分を切開あるいは切除し、肛門を広げます。裂肛痔瘻も同様です。しかし広がることで、皮膚(肛門上皮)が不足するため、そのすぐ外側の皮膚を一部ずらして、直腸粘膜に縫い付ける方法をとることもあります。当院では1泊2日の入院手術で行なっております。

3.肛門周囲膿瘍と痔瘻(あな痔)

症 状

 肛門の中から細菌が入り込み肛門の周りに炎症が強く起きて膿んだ状態が肛門周囲膿瘍で、炎症が比較的落ち着いて肛門の中と外がトンネルでつながっている状態が痔瘻(あな痔)です。両方は、本質的には同じものです。肛門周囲膿瘍では、肛門の周りあるいは奥が腫れて痛く、場合によると発熱や排便障害などが出てきます。肛門周囲膿瘍で膿が出て炎症が治まると、痔瘻となりしこりとして残ります。痔瘻は、しこりのみで痛みのない場合や押せば痛みを感じたり、常に分泌物が出ているなどの状態があります。肛門の中で、細菌が入り込む穴を一次孔といい、肛門小窩(肛門腺の開口部)にあたります。皮膚から膿の出ている箇所を二次孔といいます。一次孔と二次孔の間のトンネルを瘻管といいます。両者はその形と広がり方から次のように分類されます。
I.皮下あるいは粘膜下痔瘻(膿瘍)
II.内外筋間痔瘻
IIL.低位筋間痔瘻(膿瘍)
IIH.高位筋間痔瘻(膿瘍)
III.坐骨直腸窩痔瘻(膿瘍)
IV.骨盤直腸窩痔瘻(膿瘍)

肛門周囲膿瘍の治療

 膿瘍の表面の皮膚を切開して、中の膿みを出します。表面に近い小さなものは、局所麻酔で充分に膿みを出す処置ができますが、深いものや範囲の広い場合は腰椎麻酔(下半身麻酔)で会陰部の皮膚または直腸内に切開排膿し、隅々まで開放し、膿汁を排出するためのチューブを挿入します。炎症が治まれば、約25% の方は治癒しますが、残りの75% の方は後ほど痔瘻が形成されます。

痔瘻の治療

 手術にて根治療法を行います。そのやり方は、瘻管を開く方法、切除する方法、くりぬく方法などがあります。痔瘻の形や広がり方、肛門からの距離、深さなどで、選択されます。
 その他、痔瘻にゴム等を通して縛り、徐々に切っていくシートン法という方法があり、クローン病における痔瘻の治療に用いられます。

4.直腸脱

症 状

 直腸が粘膜から筋層まで全層で垂れ下がって肛門より脱出します。直腸を支持する組織の緩みにより発生しますが、肛門括約筋の緩みも認めます。

痔瘻の治療

 脱出した部分を中に戻すためには手術が必要です。最も簡単で、普及している方法はGant-三輪法+Thiersch法で、粘膜を小指の先くらいにつまみ、糸で縛ります。それを数十箇所行うと直腸は縫縮され中に戻ります。しかし、肛門の括約筋が弛緩していますので、それをナイロン糸などで、適当な大きさに絞めます(示指が入るくらい)。その他、開腹して、直腸を吊り上げて腹壁に縫い付ける方法や出ている部分の粘膜を剥がし取り縫合する方法などがあります。

ぢの治療と予防8か条

  1. 毎日おふろに入る
    おふろに入るとからだが温まり、血行がよくなります。また清潔にもなります。おふろは一番の予防・治療法です。
  2. おしりを常にきれいに
    おしりを汚くしておくと細菌が繁殖し、かゆくなったり炎症を起こします。排便のあとはできるだけきれいにしましょう。
  3. 便秘・下痢はよくない
    便秘をすると固い便がたまって、肛門を傷つけることがあります。また排便のとき強くいきむため、肛門付近のうっ血をきたします。下痢は肛門を刺激し不潔にもなり、細菌感染を起こしやすくします。
  4. トイレで強くいきまない
    排便のとき強くいきむと、肛門のうっ血や出血をきたすことがあります。また力仕事や過激なスポーツなども、肛門に負担がかかるのでよくありません。
  5. 腰を冷やさない
    腰を冷やすと肛門の血行が悪くなるので、よくありません。
  6. 座りっぱなしはよくない
    座りっぱなしや立ちっぱなしでいると、肛門のうっ血をきたすことがあります。ときどき軽く体操をして、血行をよくしましょう。長時間のドライブは避けましょう。
  7. 酒・胡椒・からしなどの刺激物は避ける
    酒などのアルコール類、胡椒、からしなどは肛門を刺激し、うっ血をきたします。できるだけ控えめにしましょう。
  8. 間違った治療は禁物
    正しい診断をつけてもらうことが、ぢの治療の第一歩です。腸の病気ではないことを確かめてもらうことも大切です。
ふるかわ北安東クリニック 【ふるかわ北安東クリニック】  
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